内部監査報告書が変わる!『理科系の作文技術』で伝わる書き方を学ぶ
こんにちは、Junです。
内部監査プロジェクトの最終成果物である内部監査報告書。
関係者と内部監査部門をつなぐ、大切なコミュニケーションツールです。
そのため、内部監査人にとって、質の高い内部監査報告書を作成するための作文能力は必須です!
しかし、作文能力の大切さはわかっているものの、
- 書いてあることが、伝わらなかった または 誤解された
- 上司のチェックを経て、ドラフトと最終版がまったく別物になった
という経験のある方も少なくないと思います。
そこで・・・
しっかり伝わる内部監査報告書を書きたい内部監査人に向けて、
私が名著「理科系の作文技術」から学んだ、内部監査報告書の質を上げるためのポイントをご紹介します。
内部監査報告書の質を上げるためのポイント
5つの観点でまとめました。
- 読者を意識する
- 結論を明確にする
- 必要なことだけ書く
- 事実と意見は区別する
- はっきり言い切る
読者を意識する
内部監査報告書の提出先は複数想定されます。
しかし、内部監査報告書の作成にあたっては、社長、監査役、監査対象部門のトップをイメージしておけば大きく外さないと思います。
彼らが欲しい情報は、監査対象部門に“重要な”問題はあったのか?です。
これ意識すれば、後述する「内部監査報告書で伝えたいことは何か?」を考える際の目線を上げることができます。
また、重箱の隅を突くような発見事項を指摘・報告することも減ると思います。
さらに、読者の予備知識を考慮すれば、不必要な専門用語の使用を避けたり、一部の人にしか分からない固有名詞の使用を避けるなどの気づかいもできます。
読者が誰であり,その読者はどれだけの予備知識をもっているか,またその文書に何を期待し,要求するだろうかを,十分に考慮しなければならない.
結論を明確にする
つぎに、自分は内部監査報告書で何を主張するのかを考えます。
具体的には、内部監査報告書の総合評価に書くことを最初に決めておくことが重要だと考えます。
これが内部監査報告書全体のゴールになるからです。
内部監査報告書のフォーマットに総合評価がない場合でも、主張したいことを一言メモしておくだけでも効果があると思います。
一方、詳細を書いていると、総合評価の記載に違和感が出ることもあると思います。
その場合は、適宜、総合評価の記載を見直し、結果詳細との整合を再度確認してください。
“自分は何を目標としてその文書を書くのか,そこで何を主張しようとするのかを熟考して,それを一つの文にまとめて書いてみることを勧める.
そういう文を目標規定文ということにしよう.”
“標規定文を書き,そこからその目標に収束するように文章ぜんたいの構成を練ることが必要だと考える.”
必要なことだけ書く
総合評価に書くことを決めたら、あとはその裏付けになる情報を無駄なく書いていきます。
知っていることを色々と書きたくなりますが、読者にとって重要でない事は勇気を出して削りましょう。さらに、文はできるだけ短くする努力をします。
なお、経験上、書いている時に読者視点を持つのは難しいです。
そのため、一度書き終わった後に、「自分が社長だったら」と想像しながら、視点を変えて内部監査報告書全体を読み返すことをオススメします。
さらに、想定される読者である経営層は多忙です。
内部監査報告書を隅から隅まで読んでいる時間はないかも知れません。
重要なこと(結論)から書いていく意識も大切です。
“必要なことは洩れなく記述し,必要でないことは一つも書かないのが仕事の文書を書くときの第一の原則である.”
“不要なことばは一語でも削ろうと努力するうちに,言いたいことが明確に浮彫りになってくるのである.”
私は,仕事の文書はすべてこういう重点先行主義で書くべきものと考える.
事実と意見は区別する
内部監査報告書の中でも、事実と監査人の意見の区別が曖昧な記述を目にすることがあると思います。
これらをはっきり区別しないと読者に不正確な伝達をすることになります。
また、事実を書く際には以下も重要です。
- 誤解できないように書く
- 主語をはっきりさせる
書いた文章が複数の意味に捉えられないか、注意深く読み返す必要があります。
また、主語がはっきりしないと、統制実施者は誰?責任の所在はどこ?これは誰の意見?など、多くの疑問が出てきます。
その結果、伝わらない、または誤解を招く内部監査報告書になります。
自己チェックの際には必要な主語が抜けていないか、確認したいですね。
仕事の文書を書くときには,事実と意見(判断)の区別を明確にすることがとくに重要である.これは,何でもなさそうにみえるが実はそれほど容易なことではない.
はっきり言い切る
自信のない、あいまいな表現で書いてある内部監査報告書を読んで、経営層が意思決定したいと思うでしょうか?
私はそうは思いません。私が経営者であれば、自信を持って報告してほしいと考えます。
ぼかした表現はせず、自信を持ってはっきり言い切る表現で記載しましょう。
監査において、自信を持って言い切るには、客観性の保持と十分な証拠集めが重要と考えます。
自己チェックする際には、監査対象部門に過度に配慮した表現になっていないか?という観点から確認することをオススメします。
また、監査手続の段階から、内部監査報告書を意識して、十分な証拠集めをすることも重要です。
世の中には,ことに実務の面では,はっきりものを言わなければならない場面がたくさんある.そういうときに相手をおもんぱかって敢えて自分の考えを明言せぬ言語習慣が、私たちの社会の風通しをわるくしている.
まとめ
今回は「理科系の作文技術」をベース、内部監査報告書作成のポイントを整理しました。
お伝えした内容は、このような内容です。
- 内部監査報告書の読者を意識し、何を伝えたいか整理してから書く。
- 伝えたいことを裏付けるのに必要な情報だけを肉付けする。
- 事実と意見を明確に分けて、はっきりとした表現で伝える。
私は「理科系の作文技術」から、多くの気づきを得ることができました。
「理科系の作文技術」には、今回ご紹介していない考え方やテクニックがたくさん書かれているので、
是非、みなさんも原作を読んで、さらに理解を深めてみてください。
ちなみに、「理科系の作文技術」には、まんが版もあります。
私は、先にまんが版を読んで、ポイントを理解してから原作を読みました。
原作で記載された例文は、書き方以前に理系な内容で難解なものが多かったです。
また、1981年初版であり、文章のまとめ方のテクニックもアナログなものが含まれます。
まんが版はそのような要素はカットして、一般的で現代でも共通するポイントだけ厳選しています。
ストーリーも現代的で面白く、あっという間に読み終えました!
最初はまんが版から読んでみて、原作でさらに理解を深めることをおすすめします。
本の概要
書籍名
理科系の作文技術(中公新書)
著者名
木下是雄
目次
- 序章
- 準備作業(立案)
- 文章の組立て
- パラグラフ
- 文の構造と文章の流れ
- はっきり言い切る姿勢
- 事実と意見
- わかりやすく簡潔な表現
- 執筆メモ
- 手紙・説明書・現著論文
- 学会講演の要領